Parceque［パスク］

メインダイニング「アッシュ」料理長　伊井野昌洋

前半に続き料理人への道、そこから得た伊井野のサービスの神髄をご紹介します。

【後編】

プロの料理人としての人生はホテルの宴会から始まった。その頃ホテルでは結婚披露宴が全盛で、料理を任されている調理場は目が回るほどの忙しさだった。決められたタイミングに料理を”出す”には、膨大な作業をひたすら”こなす”の繰り返し。もちろんそれもサービスだが、お客様お一人ずつに合わせた食事を演出したいと、他ホテルのレストランの門を叩いた。

レストランでの食事には目的、可能な滞在時間、お酒の有無、お召し上がりになるスピード他様々な個性があり、予約と同じ数だけのランダムな波を同時進行で完成させる醍醐味がある。それをお客様の幸せとして提供するには料理人達の技術はもちろん、どう喜んでいただくかを先読みする心をどう育むか、ここが最大の課題だと知った。それを痛感したのはある上司の姿だった。

理不尽な指示を出し続けるも本人は関与しない。スタッフは疲弊し、お客様の為では無く内向きの仕事に変わってしまっていた。コンプライアンス遵守の今では当然のことだが、当たり前である「料理人の精神面と体調管理の大切さ」を心底実感した。

その後、総料理長 山口浩と出会い二人三脚で30数年、食を通した想い出をいかに創るかを考え続けている。そこに前出の話が生きるのである。体調不備は料理、思考を台無しにしてしまうと夜に糖質を摂らない。俳優が最高の状態で舞台に上がるように、料理人もレストランを劇場だと臨んで欲しいと言う。命令では何も解決しないことを知る伊井野は、共演者であるスタッフの考え方を聞き、一度かみ砕いてから話し、一緒に演出していく。それは前向きな気持ちを生み、信頼関係を築いていく。バックヤードの空気は料理に出る。お客様にそれを感じさせてはならない。この人間らしさが、伊井野を料理長にした由縁なのだろう。
「これからも日々料理を進化させ、お客様に幸せになっていただきたい」と話す眼差しには、生粋の料理人として歴史が宿っていた。

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【新たなコースが始まります：ムスリムコース】

2025年に開催される「大阪・関西万博」の兵庫県フィールドパビリオンのアンバサダーを務める神戸北野ホテル 総支配人・総料理長の山口浩。世界中から訪れる外国人のあらゆるニーズにお応えできる多様性の高いホテルでありたいとムスリムコースを始めます。ムスリムの約束をしっかりと守り、日本の食材をフランス料理のテクニックで仕上げた、ある意味新しい日本料理として味わっていただけます。食材の宝庫、兵庫五国の恵みを堪能いただける神戸北野ホテルオリジナルのムスリムコースは、健康志向の方々にもぴったりです。

＜自家製スモークサーモンのマリネ　サラダ仕立て＞
たっぷりの野菜と共に盛り付けられる華やかな一皿。ドレッシングは香草を使い香り高く仕上げられています。マリネ用のビネガーもムスリムに添って植物性のものを使用しています。

＜魚のクネルと海老のソース＞
魚をすりつぶしてペースト状にしたものを蒸して作る料理で、スフレのような柔らかい食感と素材の旨みを楽しんでいただける逸品。海老のソースの濃厚さとのマリアージュは秀逸です。

＜ハラール認証された牛ヒレ肉のステーキ＞
ハラール認証された牛ヒレ肉を使用したステーキ。肉汁で作られたソースとの相性を、付け合わせのジャガイモのフリット・レモンバター添えと共に味わい尽くしてください。

• 厳格なハラール対応コースではありません。
• キッチン、調理道具、食器類などはムスリム専用ではございません。
• 牛肉はハラール認証肉を使用しています。
• 豚肉やアルコール、発酵調味料は使用していません。

＜料金＞
ランチコース：5品＋デザート　　￥13,000(税・サービス料込)～
ディナーコース：6品＋デザート　￥19,000(税・サービス料込)～

＜期間＞
2024年12月2日(月)～